小説を読むように映画を見るということが、岩井俊二作品なら可能なのだ 映画『Love letter』

映画『Love letter』は、岩井俊二の代表作と言われる実写作品。僕は日本の女優についてあまり詳しくなく、だからこそ「演じている人」といったものをあまり意識していなかったのだが、この映画の中山美穂さんには強烈な印象を抱いた。

この映画の物語は、主人公が、天国へ旅立った元カレと同姓同名の女性に、手違いで手紙を送るところから始まる。主人公と女性との往復書簡に沿って、物語が進行していくのだが、手紙を送りあっているこの二人は、中山美穂さんが一人二役で演じている。

恥ずかしい話、僕はこれを映画を見た後に気づいた。言い訳がましいが、それほどに中山美穂さんが演じている二人の人物から、別人と思ってしまうほどにそれぞれ異なった人格を感じたのだ。当時二十代でありながら、別人のように演じ分けが出来てしまう中山美穂さんは恐ろしい演技力を持っているのだと思った。

そして、この作品の柔らかく温かい雰囲気を作り出しているものとして、僕は風景描写の良さを挙げないわけにはいかない。

包み込むような光で照らし出され、ぬくもりを感じられる室内と、外の静かで肌寒い印象のある冬の風景が見事に対比されていて、感情が揺り動かされた。

登場人物の感情と風景が結びつく、小説の風景描写の感覚を、映画であるにもかかわらず味わった。岩井俊二監督の映画がよく「岩井美学」と形容されるゆえんが分かった。

あとこれは個人的なことなのだが、この映画の舞台となった北海道の小樽には以前自転車で旅行をしに行ったことがあったので、見たことのある風景が多々見受けられて嬉しかった。

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