偉大な数学者はどのように生きたか『ビューティフルマインド』

『ビューティフルマインド』は、ナッシュ均衡という独自理論を打ち立てた天才数学者、ジョンナッシュの半生記をなぞった映画だ。

たぐいまれない才能を持ちながら、天才ゆえに孤立し、総合失調症に悩み抜いた彼の在り方が、鮮やかな心象風景とともに克明に描かれていく。

僕は、以前から天才の人たちが普段どのように考えているのかとか、どのように一日を過ごしているのかということを見るのが好きだ。

散歩の時間を厳格に守る哲学者のカントとか、毎朝10km走る村上春樹とか、そういう天才たちの普通ではない習慣を見るのが好きだ。

(天才の人たちの習慣がまるまる一冊収録されている、『天才たちの日課』という本を読んだくらいには。)

だからこの映画は半分フィクションではありますが、天才ジョンナッシュがどのように振る舞っていたのかを見れて面白いものだった。

ただ一点注意が必要なところがある。

それはこの映画の内容がナッシュの数学者としての姿よりも、人間として病気で思い悩む姿を描きだす方に焦点がおかれているということだ。

だから、福山雅治の『ガリレオ』のようなものを求めて、この映画を見た視聴者は、退屈な気持ちを抱えるかもしれない。実際、ナッシュの病気、総合失調症が一進一退を繰り返すこの映画は、すこし鈍重としたストーリー展開となっている。

総合失調症で思い悩むナッシュに共感できなければ、没入感のないまま退屈に時間を過ごすことになるだろう。

僕が好きな数学者に、岡潔(おかきよし)という人がいる。

岡は、日本で最も偉大な数学者の内の一人だ。彼には数学の真理を掴むために遁世(とんせい)し、10年以上念仏をしながら過ごしたという逸話がある。

ナッシュしかり、岡潔しかり、実際にこの世には存在しない、形而上の問題を取り扱う数学の世界にハマると、常人と離れた考えや認識に到達するのだろうかと僕は感じた。

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